昭和40年代の初期ごろから市場に出回り始めた育毛剤は、その後、名を変え、品を変え、次々と新製品が生まれ、いまや空前のブームとなっています。しかし、残念ながら副作用やリバウンドもなく、確実に効果が出て、消費者には納得され使っていただけるようなものは少なく、大半が宣伝につられて使ったが、だめだったというのが現状です。なぜ、従来の製品に顕著な効果が出なかったのかと不思議に思われているのではないでしょうか?
発毛剤などの成分が毛穴の開口部から毛乳頭に達する時間は、約3時間かかります。これは、人間の持つ防御機構と排泄機構による浸透阻止作用によるもので、これがあるためにパーマ液やヘアダイ液、その他あらゆるものが頭皮に付着しても、真皮層まで届くことなく、大事に至るものを食い止めているのです。しかし、目的をもって故意に何らかの物質を浸透させようとすると、逆にこの機能が仇します。
大半の発毛剤などは親水性タイプですから、直接、皮膚から浸透させようとすると、表皮に存在する脂肪膜によってはじかれます。仮に表皮を通したとしても、角質層と顆粒層の間に位置するオイルゾーンに阻まれて浸透することができません。したがって毛穴から浸透させようとするのですが、そこには皮脂によるバリヤーがあるために浸透が妨げられます。そこで考えられたのが、多量のアルコール類を混入させ、その皮脂を溶解しようとしたのですが、毛包内にある皮脂のバリヤーは強く、皮膚障害や毛髪生成障害のほうが優先し、机上理論のようなわけには行きません。
それなら皮膚を糜爛させ組織破壊をすれば浸透するだろうと希塩酸などを混入した発毛剤が出回ったこともありましたが、あまりにもリスクが多く、いつの間にか姿を消しています。
更に大半の発毛剤は化学合成成分によって構成されていますから、浸透どころか、毛包そのものの防御機構が頑なに侵入を阻止しようとして働きます。
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